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影山常次著「田村小史」 序文



影山常次著「田村小史」

旧中妻村神山文書をもとにして書かれた「田村小史」

三春地方の閉塞された歴史に風穴を開けて、敗者の視点から見た地元の歴史「三春地方の郷土史」に光を当てた影山常次さんの功績に敬意を表しその序文を原文のまま掲載たします。


序文

「知る」と云う事は「愛する」の始めであって、親愛なる交情も、尊敬しも、歓喜の念もあらゆる美徳も真に「知る」と云うことから生れて来ます。

美るわしい伝統に栄える、吾が大和民族の郷土の山川風土、この1木1草、我々の日常眼に触るこの石、この文字、何れも吾が祖先の貴き遺物であり、その裡に私共と血を同じくする先人の生活、思想文化が生きて居るのであります。

新しき世界に向って真現の探求に精進する智的努力は瞬時も忽せにしてはなりません。
而して古きを探ねて新しきを知るの用意を忘れて、その智的探求が大地を忘れ中空に浮動する生半可な物知りとなることを戒めたいと思います。

常に郷土を知らぬ人は不幸で恥しいことだと存じます。仮令自分の郷土でなくとも縁あってその土地に住む人、その土地を一層探求して知ることがその土地を愛することで、相親しむ基となり、我国のあらゆる土地を通して吾々は人生の悦びを知ることが出来るのでしょう。

楽しんで研究し、研究して楽しむことが出来ながらも日本民族としての歓喜と衿持とを、知らず知らずに培われ、郷土研究ほど意義深いものはありません。
村の部落に埋れた1個の碑石から無名の義人を見い出し、或は篤農の偉人を発見する、峠の茶屋の老媼から孝子節婦の話を聞くことが出来、1枚の古瓦から千年以前の我が祖先が建設した飛鳥朝の文化を偲ぶ事が出来るのであります。





郷土研究に志す人々亦た今日までの研究を空しくすることなく、特に若い学徒も青年も謙遜な態度と鋭い学問的良しを持て郷土資料を蒐集して、これに学問的な系統を与えて体系化し、明日への偉大な文化建設に先んじ、その足元から実行努力を望みたいと願う。

私はこの意味を深くして郷土観に微力を寄せてまいりました。
熱情の材料を綴り、粗雑ながらも“たわむれ”の小史として実を結ばしたくこの挙に出ました。

この小史には総て町村毎の詳かを期すことが出来ませんので遺憾の数々があります。
故に次回「ぞく編」町村伝説風土誌を稿録して町村毎の文化、芸術、信仰、人材、産業等を詳細に致すことを約したいと存じます。

本史の出版に際し、先輩各位のご援助とご指導に深甚な謝意を表します。

昭和三十三年(一九五八)八月

作者識 影山常次


春陽郷三春城下 御菓子三春昭進堂


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