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「紅蓮山観音寺だより」第62号


島根県浜田市にある曹洞宗の古刹「紅蓮山観音寺」さまより、季刊誌「紅蓮山観音寺だより」が届きました。

今回は、新年号ですので、花吉方丈さま、小笠原総代さまはじめ観音寺役員の代表の方々からの新年の挨拶に始まり、「話したいこと」と題された寄稿の部では、夏の浜田帰省の折の参禅で、お世話になっている、野原眞承和尚や、定岡藏心和尚、そして先ごろ観音寺にて得度なされた土井龍操和尚のアメリカ訪問記が掲載されて興味深く読まさせていただきました。



また、方丈さまの新年の御挨拶の中に在りました、平成26年10月8日(水)~10月12日(日)までの5日間、二十五年ぶりに観音寺で加行挙行される、石見祖門会による「一華藏法会」お授戒会のご案内をホームページに、後ほど詳細を記載したいと思います。



私も、お授戒会は、平成11年11月に、郡山市において開催された、曹洞宗福島県青年会主催「一華藏法会」「報恩大授戒会」に参加したことがありまして、「法岩龍道」という戒名を頂いています。
興味本位ではありましたが、生きているうちに戒名が貰える短期間ではありますが、雲水修行と聞き、少しは覚悟をしていましたが、一日中、畳三分の一の処に座って説法を聞くと云うことがあれほど辛いとは思いもしませんでした。
また、普段から偏食気味でしたので、決められた精進のお斎だけというのは、大変辛い修行です。
坐る、お斎、を通じて、「知足」(我、足りるを知る。)をご教授され、普段の生活においての戒めとしております。


今回は、私も「さすけねぇぞい福島!」と題して寄稿させていただきました。

下記はその内容です。




「さすけねぇぞい福島!」

紅蓮山観音寺門前川上縁  福島県三春町 髙橋龍一

東日本大震災、そして原子力発電所の事故以来、福島が「フクシマ」と呼ばれるようになり、方丈様はじめ観音寺縁の皆様には大変ご心配を頂きましたこと心より御礼申し上げます。
幸いにも私の住む三春は福島県の中央部に位置し、古来より“磐城之国”と呼ばれ、強固な岩盤の上に立地しており、周辺市町村に比べれば揺れは少なく、最大でも震度5強くらいの揺れで納まりました。
周囲を見渡しても、屋根の瓦が数件で落ちた被害はありましたが、負傷者の被害報告などはなく、念のため不要の外出を控えている程度で、電気ガス水道と云ったライフラインも通常通り機能していました。

また、私の営む和菓子屋「三春昭進堂」では、ちょうど電気窯でカステラを焼いていて、ガス窯ではこしあんを30キロ炊いている途中でしたが通常通り作業、そして営業を続けられ、被害も最小限だったと思います。
発生直後は「どこか遠くで大きな地震でもあったのかなぁ?」と云った感じでしたが、時間とともに、テレビや新聞などの情報により、大地震の実態か明らかになってきますと、近隣の市町村ではライフラインが止まり営業どころか建物倒壊などにより甚大な被害を受けているとの事でしたが、ここ三春は奇跡的に被害がなかったと安堵した次第です。

以来、お彼岸前と云うこともあり、混乱の中ではありましたが、通常通りの営業を心がけました。
しかし、福島第一原子力発電所の事故発生後、在来線や新幹線などの公共交通機関の運休や幹線道路の寸断など、通常営業が困難な状況の中で、引菓子など注文の延期やキャンセル。いつまで続くのか?先の見えない不安の中で「甘いものを食べてほっとした」「元気が出たよ!」との言葉とともに来店していただくお客様に、私たち店側が励まされ「休まず営業してよかった。よ~し!気合を入れて、今自分の出来ることやろう」と思うことが出来ました。



無我夢中で一月が過ぎたころ、何事も無かったように桜は咲きました。
三春には、樹齢千年とされる日本三大桜の一つ「瀧桜」がいます。
この瀧桜の持つ生命力にどれだけの人々が癒され、勇気づけられたことでしょう。
震災発生の翌月、大震災、原発、風評などの最中でしたが、例年通りですと花見の時期で、和菓子屋の当方としては、地元の方々や観光客のみなさまに「三春名物花見団子」を販売する一年で一番忙しい時期。
今年は無理か?どうする?心が折れそうになりながらも、出来ることからやろう。少しでも皆様に安心を買っていただこうと、社長として、家長として明一杯に気張ってその春を迎えました。



しかし、その心配を他所に、「三春瀧桜」の開花が宣言されたかと思うと、当店には「花見団子」や三春名物「おたりまんじゅう」を求めて来店するお客様が列を成していただきました。
その日以来、約三週間に渡って大勢のお客様のご来店を頂き、花見期間の売り上げとしては当店始まって以来の売り上げ記録達成です。
工場より望み見る、お菓子を買って帰るお客様の後姿に、笑顔が見えています。
菓子屋として一番嬉しいひと時です。

 自慢に聞こえるでしょうか?しかし、私は声を大にしてこの実績を吹聴したいんです。
それは、震災以前から、三春に限らず日本全国の商人の元気がありませんでしたから。
小さな三春の小さな饅頭屋の気を吐いてがんばっている姿に「負けてたまるか!」という気概を、三春・福島はじめ全国の商人の皆さんに持っていただきたい。



“風評被害など何処にも無い、風評は自らが作り上げているんだ!”ということを判っていただきたいと思っていたからです。
この瀧桜満開の繁忙期とき、観音寺方丈様より陣中見舞いとして、山陰浜田の海の幸「浜田の干物」を頂戴し、家族と従業員皆でおいしく頂きました。
翌早朝、仕込みのために一人工場で作業をしていると、家内がおにぎりと「浜田の干物」を朝食として持ってきてくれました。

時間を見て、誰もいない作業場で、方丈さまとのご縁に感謝し手を合わせながら頂だいていますと、張り詰めていた緊張が緩んだのでしょう、方丈様の心遣いが心にしみて、ありがたくて、うれしくて、涙がとめどもなく流れ落ち、ここ東北の三春の地で、浜田の味と共に、幸せをかみ締めたことを一生忘れられません。
本当にありがとうございました。



今年の夏も妻の実家の墓参りを兼ねて島根県浜田市に帰省しました。
毎年、方杖さまのご厚意に甘え、滞在中の短い期間ですが毎朝参禅し、本堂の座禅場の末席を拝借「心」の軌道修正をさせていただきました。
参禅では、いつも方丈さまから修行僧として人間として基礎の重要性を説かれ、「自然に逆らわず、ありのまま」に受け入れることの大切さを教授していただいています。
   先の震災以来、この「ありのままに」という言葉が心にどっしりと今まで以上に重さを感じていましたが、方丈さまの全てが精進という生き方から、自然体に生きる大切さを学べる参禅です。



今年は、「因果因縁」と「ご縁」を教授いただきました。
人が生きている以上、一人では生きていけません。他人・家庭・社会等と関わり合いながら生きています。良くも悪くも自分以外の方々と様々な摩擦があって当然でしょう。
この様な生き方の全てが前世での因果が現世へ、さらに来世へと繋がっているとされています。
これは、今が諸事情によって楽しくもあり、時に苦しいのは前世からの因縁で、現世でそれらに耐え克服しておかないと来世でも同じ運命が待っていると教えられました。
例えば、今つらい目にあっていたとします。しかし、これを克服せずに、逃げ出しては、来世へとその因果が持ち越されてまた辛い目を受ける運命が待っています。
結局、過去現在未来を通じて、ゼロに戻しておかないといけないと、堂々巡りが続く様です。



そして「ご縁」。例えば、100円玉十枚に番号をふって無作為に二枚取り出します。仮に1番と3番が出たとしますが、次に取り出す時に同じく1番と3番を取り出せる確率は1000分の1の確率です。
夫婦になる男女が、ご縁があり結ばれて家庭を築くというのは、何億という人間の中でこの二人が世の中で巡り会う確率は天文学的確率と云う事になります。
当に、摩訶不思議な巡り合わせとしか言いようがありません。
それが仏様に導かれた仏縁であり、その仏縁に日々感謝しなければなりません。



私も、震災以降に、この「因果因縁」そして「ご縁」と云うもの考えるようになりました。
川上の娘と縁があり結婚して東北の三春から遠く離れた山陰の浜田へ帰省する。
そして「心の師」と仰ぐ方丈さまとの出会いがあり、様々な教えを乞い、満ち足りた幸せな人生を送れることは「仏さまからのご縁」だと思っています。
東日本大震災による原発事故からもうすぐ3年の月日が経過しようとしています。

福島・三春でもようやく落ち着きを取り戻し、メディアで云うほど風評被害なども感じられることが少なくなってきました。しかし、まだまだ避難区域や避難住民の方々等局地的には、収束が見えない状況にあります。
こうした状況の中で、因果因縁を次世代や自分の子供たちに押し付けないためにも、ご縁を頂いている家族や仲間とともに様々な障害を克服し、自分たちなりに乗り切りたいと思います。



末筆になりますが、観音寺だよりを頭が下がる思いで毎回拝読していますが、この編集に携わっている長岡様はじめ編集委員の方々には御礼を申し上げます。
ご苦労な事とは存じますが、楽しみにしていますのでこれからもよろしくお願いいたします。

 “さすけねぇぞい”とは、“心配はないですよ”という福島弁です。 



    蒼龍謹白 拝

三春昭進堂 髙橋龍一


| ryuichi | 22:00 | comments (x) | trackback (x) | 🌸島根石見國浜田 曹洞宗紅蓮山観音寺記::紅蓮山観音寺だより |