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一隅を照らす者、これ国宝なり
 「一隅を照らす者はこれ国宝なり」
三春町消防団長の提唱する「災害現場対応能力の高い消防団創り」の引率分団としての誇りを根底に、「三春火消し組」直系の三春分団長を務めさせて頂いています。
「訓練は現場のように」という言葉を私は口にします。どんな修羅場に行っても、訓練のように落ち着いて活動出来たら自然と余裕が生まれます。月2回のポンプ整備等の消防団活動で、実質的な火災防御訓練を実施して、団員個々の技術向上と、消火隊として具体的に何が足りないのか、どんな訓練をすれば実践で能力を発揮できるのか、と言ったことを念頭において訓練を奨励しています。
そして、安全管理に一番気を使います。出動する団員に怪我をさせるわけには行きません。当然災害現場では、消防署員とは違って酸素ボンベや必要な訓練そして保障などはないものですから、一線は画します。私たち指揮者も万全を期して出場する訳ですが、それでも非常心理が働く災害現場では、何が起こるかわかりません。そのために、災害現場での防火服、三春分団では外皮と呼んでいますが、外皮、ヘルメット、手袋、長長靴の完全装着を義務づけと有効な情報の聴取を徹底しています。
 災害発生と同時に、出場途中の消防車の車内で、水利が書き込まれた地図を見ながら現場を想像します。出場部隊を念頭に、現場がこうだったらこういう手を打っていく、と言う風にあらかじめ予測を立てる。そして状況を見て修正していきます。ただ現場には一つとして同じ状況は無いわけですから、いくらマニュアルがあっても通用しません。現場では、マニアルにはない事柄、例えば機転を利かせるように努力します。例えば、田んぼ脇の小さな水路や、側溝などありとあらゆる手段を使ってとにかく水を出します。だから普段の訓練で養った、基本が大事なってきます。小さな基本の一つ一つをどれだけ自分の中に持っているか。それを積み重ね、頭の中で組み立てることによって、一つの道が見えてきます。
そして、一番の回避事項は、不安です。この不安というものは、我々現場では最も避けるべきです。災害現場では、あれこれ迷ったり、自分の気持ちに不安定なものが出てきたりすると、どうしても命令や行動のひとつひとつが中途半端になってしまいます。そうなると、失敗や怪我の確立が非常に増すことになります。
先輩から「消防は、人格的成長」と教導を受けますが、その階級に見合った個々の人格と対人技術そして消防技術の向上を目指すべきものであり、まさしく有事の指揮者が肝に銘じておかなければならない事柄です。
天台宗の開祖である最澄(さいちょう)の教えに、「一隅を照らす者はこれ国宝なり」という名言があります。黄金を山と積んでも国宝にはなり得ないが、こつこつと努力し、善行を積み、社会の片隅でも人間の心に明かりをともす人が本当の国宝なのだという教えです。「一隅を照らす」光明は最初は弱く、非常に限られた局所的なものかもしれません。しかし、日々の努力・精進の積み重ねにより、その光は次第に充実したものとなり、より強く、より明るく、より遠くまで届くものとなることでしょう。消防団活動を通じて「ここに三春分団員あり」という存在感と自信のある人間に成長していただきたいものです。

平成17年11月7日掲載


| ryuichi | 08:43 | comments (0) | trackback (0) | 🌸福島民報社「民報サロン」 |
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