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耳鳴りの彼方へ 2
   H18年度秋季検閲式消防ふれあいデイに係わるレポート提出を受けて
                             H18.11.30
                        三春分団長 高橋 龍一
 
1.序文にかえて
日本人が行動を決定する場合、「みんながやっている。自分だけ取り残される」とか、「みんなが持っている。だから欲しい」というように、いつも「みんな」が基準になる。その人の意思とか、信念、さらに良心はどこかに忘れ去られてしまっているのである。
 政治倫理が問われ、企業倫理そして消防倫理が問われて久しい。政治も企業そして消防団も、しょせんそれを動かすのは人である。要するに経営者の、人としての倫理観の問題である。それがまったくなってないということではないか。 普通の人なら、「十人十色、千差万別。いろいろあるだろう」とすませても、我々消防団の幹部は、そうはいきません。
公人としての哲学とか倫理が必要である。すなわち、しっかりとした生き方や考え方、自分の足元を見つめる目と時代の未来を見据える目、その複眼を失ってはならない。また公人として、していいことと悪いことのけじめを失ってはならないのである。

2.はじめに
平成15年4月に、副分団長に任命されて以来、三年半、10回目のレポート提出になります。その間に様々な提言を上申してまいりましたが、主体的な部分が取り上げられて具体的に形として、さらには感覚として三春町消防団に採択、そして採用されたことに対しまして、団本部はじめ町当局そして各分団の幹部の皆様には、深く御礼を申し上げます。
 本「平成18年度秋季検閲式消防ふれあいデイのレポート提出」を受けてのレポート提出でも、検閲式及び消防ふれあいデイの具体的な詳細な事項の反省と問題提起については、直接指揮を執った三春副分団長からのレポートと、添付の資料である、三春分団各部長名で出された各部末端団員までの意見を集約したレポートに託したいと思います。
 本レポートでは、将来的に発生するであろう諸問題に対する消防改革の本丸とも言うべき、消防施設及び資機材の要望に関する分団長取りまとめの意義の開示、そして次年度三春町の防災の要として次世代を担う各分団の副分団長への苦言、そして分団問わず各部長以下班長の職責にある消防団幹部の皆様に、老婆心ながら提言を呈したいと思います。

 3.消防施設及び消防資機材分団間取りまとめの上要望の意義
今年度、平成19年度以降5年間の防災計画を策定及び作成にあたり、これまで事務局一任であった消防施設及び資機材の配備を、所轄地域防災のトップとして、また、直接現場で指揮を司る各分団長の集まりである平成18年度分団長会として相互分団の地域性や、実情を十二分に協議して団本部へ、向こう5年間の年次配置・配備計画として要望して行きたいと思います。そこには、将来的に懸念される平日昼間の有事現場出場団員の出動率の低下に伴い有効的かつ効率的な活動を確保する為に、防災戦略及び戦術の確立と合わせて提言すると云う核の部分が含まれています。
 消防施設に関しては、昨今の三春町消防団主催の北部・南部に別れてのポンプ運用火災防御訓練なども、訓練場所は、自他共に認める水利欠乏箇所、即ち火災が起きたときに消火まで時間のかかることが予想されている箇所です。その実状を考慮しながら施設要望をして行きたいと思います。
 また、消防資機材については、消防備品と消耗品をかけて考え、分団対応(各部対応)と臨時及び緊急事務局対応とに振り分けをして、各項目ごとに要望して行きたいと思います。そして、これを基に副分団長及び分団幹部諸君に諮り(はかり)ながら、H18年度分団長会の連名で団本部に要望及び上申して行きたいと云うのが趣旨ですが、そこには全ての責任を団本部及び役場に押し付けるのではなく、各分団の幹部としてその職責において責任を負うということ、そして地域の安全と安心は自分がその職責の名に於いて絶対確保を意図するものであり、「我田引水」の助長では在りません。

  4.各分団の副分団長諸君への苦言
一斉放水訓練などは、普段実施している定期のポンプ整備で放水訓練や中継訓練を実施していれば予習など必要なしという認識の基に、予習では位置確認のみで訓練可能という認識を持っていました。
それを踏まえた中で、今回、全ての反省点の根源は、事前準備の一斉放水訓練の予習にあります。それを具体的に表すならば、一斉放水訓練の注意点を編成順位一位である三春分団長として伝達しましたが、その中の一つに「一斉放水の指揮官は各分団の副分団長である。その内容は副分団長間で決めていただきたい」と伝達しました。
その前段で、事前準備参集後に、編成順位最右翼三春の分団長が、予習開始前に整列の号令を掛け各分団の人員報告を受け、本部分団長へ申告した意味を各々がどのように理解したかと云う点にあります。
 それは、あえていうなれば、消防団活動の全てが規律であります。それを踏まえた中で、上記は、「始まる前と終わりには整列しけじめをつける。」という単純なことだけではなく、また、今まで事前準備には整列もなく、唯なんとなく時間に集まり、終わりがはっきりしないまま流れ的な解散としていたことへの「抗議的」意味合いだけではありません。
今回、主題として副分団長の皆様に理解していただきたかったのは、「烏合の衆・棟梁だけのチームでは家は建たない」ということ。具体的にいうなれば7人の副分団長の中の指揮者を自己認識で互選し、選出して訓練方法の統一を図るということ。そしてその方法の中で予習の為の役割分担として水元指揮者、火点指揮者、中継指揮者、全体指揮者を配して、直接ポンプ運用の部隊には、その指揮者に副分団長間での決議事項を、しっかりと伝達して予習及び本番に臨んでいただきたかったと思います。
決定的・偶発的な局面で、最高指揮官が不在であり、尚且つ、組織的にも責任の所在が曖昧で、分団内の各部隊が勝手な思惑で行動し、指揮官がそれを統率できないという日本型組織にありがちな欠陥の露呈です。あえて言うならば、マネジメントは在っても、リーダーシップが無い事に起因するのではないだろうか?
マネジメントとは、目の前の梯子をいかにして効率よく昇るかであり、リーダーシップとは、その梯子が正しい場所に架けられているかを判断する仕事であると考えます。
どんなに梯子を早く上っても、その梯子が間違った場所に架けられていれば、その目的は達成できない。どんなにマネジメントが優れていても、リーダーシップが不在であれば、結局は失敗する。
これらの意味に於いて、副分団長の諸君には、目の前に迫った既成の行事などを処理する能力には長けている人は多いが、全体としてどの方向に向かって行動し、何を行なうべきかを統一的に指示する指揮官の存在を欠いているのではないだろうか。
さらに付け加えるならば、将来の消防団を見据えた中で現況の中で消防団幹部は「本来の消防団の本質」を理解して、実戦力の低下を防ぐよう努力されたい。
我々分団長が、昨年来より事あるごとに参集して諸問題について協議したり、各分団長連名での上申書提出などは、我々が分団長だからではなく、各々が各分団の最高指揮官・最高責任者だからです。そして今回の各分団の最高指揮者は中隊長である各副分団長でるということ。そして、任期半年となる各分団長が外皮も着用せずに一斉放水訓練に臨んだ意味などを良く考えていただきたいと思います。
 昨年の消防団主催ポンプ運用火災防御訓練の「三春分団長所見」でも述べましたが、フランスの古い諺に「一匹の羊に率いられた百匹の狼より、一匹の狼に率いられた百匹の羊の方が、勝る」というのがあります。これは、指揮官の資質を物語っている諺で、指揮官への戒めです。
 正副分団長という消防団幹部は、「お飾りの村の名士や名誉職」ではなく、有事対応部隊の指揮官で各地区の防災最終総責任者であり、各種災害現場に出場の団員の身を守るためにいるといっても過言ではありません。
その意思反映と云う意味での、消防団の意思伝達機関は、整然と分団内部長(幹部)会を実施して各部の幹部に理解し、その幹部諸君が、部内幹部会を召集実施して、各班長諸君に伝達し、各班長が定例会などの中で末端団員まで周知徹底を図る。これは、意思伝達と共に安全管理上どうしても必要な行為であるし、それが消防団であろうと考えます。
そのための抽象化として、通常点検での大隊編成があり、ポンプ操法があり、一連の規律訓練があります。
訓練以前の問題として、副分団長の方々には、今後も指揮を執るつもりなら、もう少し消防資機材(中継ポンプの活用法やメーターの見方)に精通すると共に、どんなに有効的な指揮・司令も、難しい言葉や過密で繊細な司令では団員には伝わらないという事を理解したうえで、人的成長を成し遂げて、指揮命令とは何かを学んでいただきたいと思います。
実際の有事現場では、常に本部分団長や、分団長がいるとは限りません、次年度は皆様方が消防団のトップを形成して行くわけですので、副分団長間及び各分団内の意思の疎通を図るとともに、社会通念や一般常識を理解し、健全な分団経営を営むことを希望します。

5.次世代を担う部長以下の消防団幹部の皆さんへ
1、 指揮官は、現場到着前に部下の役割分担を決め、災害現場を予想し防御包囲体制をイメージして、その対応を予測していく。そして、現場に着いてから状況を見て修正を加え、人員の役割分担や、ポンプ・ホースの位置・取り回しを部下に指令するような考え方で出場してください。

2、 分団内も含めて、各部長間、部長及び班長間の意思の疎通を図り、安全且つ円滑で健康的な連携と統率の取れた消防団活動に従事すること。

3、 各部所有のポンプ車及び小型ポンプ、中継金具パッキン等の些細な資機材を含めての点検整備を怠らない事。更には、不具合がある場合は正副分団長に速やか且つ正確に不具合個所を指摘連絡する事。

4、 通常のポンプ整備、中継訓練でも、現場におけるあらゆる場面をも想定して、訓練に臨んで下さい。
訓練に於いても、災害時においても同じことですが、目の前の失敗は、失敗として冷静に受け止めて、「次の対応をどうするか?」という瞬時に機転を利かした的確な判断ができるような心構えと体制つくりを普段から心がけてください。
「訓練は現場を想定して厳しく、現場は訓練を思いだして冷静的確に」

5、 消防団員である前に、人間として資質を高める様に努力して、相互互助の育成に努めること。

6、 健全な家庭があり、仕事があり、健康な心と体があって、はじめて消防団活動に従事できます。団員は勿論、部長はじめ幹部にも言えることです、団員がその相互関係において思いやり、労り合いながら一致協力して、地域のリーダー的存在である事を認識しながら、各部とも部内の活性化に勤める事。

7、 反省とは、同じ失敗を繰り返さない為に必要な事柄であり、災害現場における安全管理の第一歩であります、各員この趣旨をよく理解して消防団活動に邁進して頂きたいと思います。
    正副分団長は、皆様よりは、消防活動を少し早く経験した者であり、客観的に自分自身の消防人生を振り返ることができる年齢になってきました、そうして振り返ってみると、後悔する事ばかりです。
自問自答の繰り返し、各災害現場での反省を元に、三春町消防団の方向性というもの、「安全」を念頭に押し進めたい考えています。
    親が子供を叱る時、自分と同じ過ちをさせない様に、必死で忠告してくれるのも親自身の実体験を基にしてのものであります。
    私達正副分団長しかり、団本部しかり、自分自身の実体験の中で、部下である団員に現場での安全というものを念頭において、通常のポンプ整備や、中継訓練などの中で強い口調での叱咤激励があります。
    各部長・班長諸君、消防団活動以前の地域のリーダーという存在をよく認識して、自分自身を客観的に見る素直さを持ち、日々反省の中で、過去の失敗から何かを学ぼうとする、謙虚な心をもって一生懸命努力する事が大事なのではないでしょうか。

8、 団員は勿論、幹部に於いても言えることですが、その良好な人間関係に於、個人的な領域まで踏み込んでの叱咤激励、相互扶助を念頭に置いて、様々な状況の中での消防団活動に「無理をきたさない活動」「個人に無理を集中させない組織つくり」という事を心がけてください。

9、 三春分団はじめ三春町消防団においては、良好な人間関係の中で「ヒューマンウエアー」が、確立しているものと確信しています。
   安全管理を前提とした災害出動の中で、その反省の意味も含めて、ポンプ整備があり、必要に応じた中継訓練があり、部長会・幹部会が在ります。
   この訓練という一連の流れの中で、是非幹部だけではなく一般団員も含めて、消防について、とことん話し合って下さい。
その繰り返しが、幹部を含めた消防団員の人生に於いて貴重な財産になるはずです。
 
10、火災現場に出動し、当然反省の意味でポンプ整備があり、中継訓練があります。その延長線上に中隊訓練・ポンプ操法等の規律訓練廃止論等の「時間の有効活用的」という三春町消防団の目指す実質的消防が成立します。

11、「火災発生時においては組織立てをしての出動を前提として消防団が存在している以上、火災防御・鎮圧活動の前に当然考えるべき事柄、部下である各分団団員を火災現場へ安全に引率して、安全に火災防御活動に従事させ、災害現場にてのあらゆる危険から守り、火災鎮圧後に部下の安全を確認して、安全に各屯所まで帰還するという、当たり前の事を、当たり前にやることの再認識と、そのために必要不可欠な、各分団幹部としての自覚と意識の高揚を目指し、その延長線上にある火災現場を想定した実践的な部単独及び分団の火災防御・送水・中継訓練や、通常のポンプ整備の徹底や、ポンプ車等資機材の実情と使用方法把握、安全管理・危機意識の再構築」という、「消防学校」では習えない消防団幹部として身近で最も大事な事柄、そして消防団として当たり前の事柄を、実質的な火災防御・放水・中継訓練等の実質的な訓練の企画立案、そして構築・習得していくことが、部長以下班長の職責にある皆様方の求められていると思います。

6.「老婆心切」 結びにかえて
 皆さまは姥捨山の物語をご存知ですね。昔々齢をとりすぎて働けなくなった老人を捨てる村がありました。ある日その村の一人の男が、齢老いた母を背負って山へ捨てにゆく途中のこと、背中で時々枝を折る音がするではありませんか。
「さては母が、捨てられたあと一人で山を降りるための目印を作っているな」男はそう思いましたが、知らん顔でようやく山奥にたどりつき、お母さんにさよならを告げました。その時お母さんはこう言ったのです。
「いま、山を登ってくる時、お前が帰り道を間違えないよう枝を折って目印をつけておいたよ。それを頼りに気をつけて里へ帰りなさい」。
 自分が捨てられようとしながら、なお我が子のために道しるべを残してやろうとする親心に男はいたく感動し、親不幸を詫びるとともに再び老婆を背負って山を降りるのでありました。その後男が孝行したことはいうまでもありません。
 自分のことは一切考えに入れずに只相手を思いやる-これを老婆心といいます。姥捨山の元の話は雑宝蔵経(ざっぽうぞう)の棄老国(きろうこく)の話であり、また老婆心は中国や日本の禅書によく出てくる言葉です。「禅の師匠は一見厳しいだけのように見えるが、老婆が子や孫をいつくしむような深い愛情に裏づけられているのだ」ということでしょうか。
 自分を目いっぱいに考えに入れ、自分の面子と損得で消防団の幹部を無難にこなそうと思っていませんか?そんなことでは本当に姥捨山においてこられます。
老婆心切、これこそ後継者作りの根本精神であることを、それこそ老婆心までに申し添えておきます。
 そして思わぬ落とし穴が「傲慢」です。権勢によって傲慢になることが、ある意味で自然なことであるというのは、昇進し権勢が大きくなるにしたがって、忙しくなる、祭り上げられる、ちやほやされる、恐れられて注意・忠告されることが少なくなるからである。
ローマ時代に確かアウグスティヌスという皇帝だったと思うが、農民から皇帝に上り詰めて、退位する時は惜しげもなく退位して、また農民に戻ったという話を聞いたことがあります。そして、「実る穂ほど垂れる頭かな...。」という言葉があるが、形ばかりではなく心から「感謝」の気持ちや「謙虚さ」を身に付けた人物にして初めて、消防団幹部を成し遂げることができることを言ったものであると確信します。


| ryuichi | 07:02 | comments (x) | trackback (x) | 🌸「戦陣藻」心苦雑記 |