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明徳述誌14番「かわいい子には旅をさせろ」
  「かわいい子には旅をさせろ」
時に4月。いよいよ、それぞれに小学校へ、或いは中学校へ、高校へ、大学へ、会社へとそれぞれの立場で、未知の世界に飛び立つ季節となりました。
夢や希望に胸ふくらませての一人立ちの第一歩、即ち、出発であると思います。

「かわいい子には旅をさせろ」という格言があります。
何ごとも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。
「和」も度を過ぎたぬるま湯体質の中では人材が育たない。だから、わざわざ「かわいい子には旅をさせて、自立心や独立心を身に付けさせなさい」と言っているのでしょう。手厚い保護のもとで養育してやる、その方がむしろ楽な今日の子育て環境の中で、強いてわが子に『どのような旅をさせてやるか』ということではないでしょうか。

実際に、「わが子に旅をさせなさい」ということではありません。
ものごころ付いた頃から、日常生活の中で旅をさせられないでしょうか? 例えば、自分の服のボタンは自分で取り外しさせるとか、自分の洗濯物は自分でたたませるとか。
自分の部屋の掃除は自分でさせるとか。
家事の手伝いを分担させるとか。
そして、学校教育や社会教育でも、どのような旅をさせて自立心や独立心を育むか、教育関係者の、子を持つ親の、そして地域社会の「知恵の見せどころ」のように思います。

わが子に身をもって生き方を教えた、勝小吉がいます。
幕末の立役者として名高い勝安房守臨太郎(海舟)の父親です。
勝海舟も相当の人物でしたが、親父の小吉は輪を掛けて不良だったようで、その親父が晩年、子孫に対し、自分のような人生を送ってはいけないと、いわば反面教師として半生を語った『夢酔独言』という自伝があります。
小吉は、幕臣で無役の小普請組に所属していましたが市井風俗外の顔役として無頼の限りをつくし暮らしは貧窮を極めたが、何とか息子の臨太郎ために学資を工面して学問させた、部類の「教育パパ」でした。
 しかし小吉は「飲む、打つ、買う」の三拍子揃ったワルだから、俺のマネはするなよと「反面教師」に徹する。これは、自分の子供を信じ、自分の姿を子供に全てさらけ出して、人との接し方を教えていました。

人は、何も持たずに裸でこの世に生まれ出て来ました。
私も、人並みに結婚して、子供をもうけて、その子が立てて、歩けて、手が動く。
こんなすばらしい人生を、周囲の方々が支えてくれている。
人生は人と接することの連続です。社会に出てから、学ぶのでは遅いことも沢山あります。その人間関係の一番初めである家庭で、親と子供が、まず向き合わないとなかなか育まれないことが多いように思います。

獅子の子育てと親子の情愛を描いた『連獅子』
獅子は、子を千尋の谷へ突き落として鍛えるという伝説があります。
実際の親子がこの作品を演じるとき、その味わいは格別楽しいものです。親から子へと伝える芸道鍛錬の心が、そのまま場面に重なって見えるようです。
手獅子を持った狂言師の右近と左近が出て、文殊菩薩の住む清涼山とそこに掛かる石橋の景色を連舞で描きます。
「かかる険阻の厳頭より」から、狂言師は親子の獅子になって、親が子を千尋の谷に突き落とす獅子の子育てを見せる。
子獅子がはい上がるのを突き落とし、子獅子はくるくると転げながら谷底に落ちていく様をみせる。親獅子は谷を覗き込みながら、子獅子の不甲斐なさを嘆くが、谷水に写った親の姿を見た子獅子は勇み立ち片足で跳びながら本舞台に駆けてくる。
そして、赤と白の毛をつけた親子の獅子の精が登場し、勇壮な狂いが最大の見せ場となっている。紅白の毛が入り乱れる華麗で息の合った毛振りが見ものです。

子供の個性は親が思うよりも素晴らしいのです。自分の経験に基づいてこうするのがこの子の幸せだということはないのです。長い目で子供の成長を見守ってやるのが親の愛情です。
 植物の栽培でも、水の好きな植物には水を絶やしてはなりませんが、乾燥を好む植物に水をやりすぎると枯れてしまいます。一人一人個性が違うように、性格も好みも違うのが当然です。自分の子であっても、自分と同じように考えるとは限らないのです。
 子供がどのように成長していくのか、楽しみに見守るという親の喜びを味わいながら、子供の成長を見守って欲しいと思います。子供は自分の力で成長していくのです。
 

            
 蒼龍謹白   合掌



| ryuichi | 12:50 | comments (0) | trackback (x) | 🌸「塵壺」 三春昭進堂 |
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