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三春物語197番 「大多鬼山の鬼穴」
田村麿伝説「大多鬼山の鬼穴」
 むかしむかし、滝根村にある大多鬼山(大滝根山)のほら穴に、四匹の鬼が住んでいました。
 そこは深い谷の中ほどにあるほら穴で、めったに人の近づかない場所です。
 鬼どもは、ときどき、このほら穴から村へおりてきて、畑をあらし、ときには子どもまでさらっていくのです。
 村人たちはすっかりおびえてしまい、仕事もまんぞくにできず、子どものいる家では、一日じゅう雨戸(あまど)をしめたまま、外へも出ませんでした。
 たまたま、この話を聞いた坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)という武将(ぶしょう)が、ウマに乗り、大勢の家来をつれてやってきました。
 田村麻呂(たむらまろ)の鬼退治は有名で、どんなに手ごわい相手でも、かならずやっつけてしまうのです。
 村人の案内で田村麻呂と家来の一行は、鬼の住むほら穴をめざして進んでいきました。
 山道の途中まで来たとき、村人が言いました。
「あの谷の途中(とちゅう)あたりに鬼がいるそうです。でも、まだそこへ行った者はいません」
 田村麻呂はウマをとめると、家来たちに武器の手入れを命じます。
 弓のつるをはりなおしたり、刀の手入れをした家来たちは、まるで本物の戦を始めるみたいに、よろいやかぶとで身をかためました。
 田村麻呂を先頭(せんとう)に、どんどんくだっていくと、谷の上につきでた大きな岩の上で、鬼どもがのんびりと日なたぼっこをしていました。
「みんな、ぬかるでないぞ」
 田村麻呂はウマからおりて、身をふせましたが、目のいい鬼どもは、一行の姿に気がつき、あわてて立ちあがりました。
「やや、おかしな連中が来るぞ。さてはわしらをやっつけようというのだな」
 一匹の鬼がいうと、親分らしい鬼が一行を見て大声をはりあげました。
「やい、そこなやつ、わしらをやっつけようとは片腹痛いわ。殺せるものなら殺してみよ」
 田村麻呂も、負けずにいい返しました。
「おのれ、にっくき鬼め。かならずしとめてくれるわ」
 田村麻呂の合図で、家来たちは、つぎつぎと矢をいかけます。
「ふん、こしゃくな」
 鬼どもは鉄棒をふりまわして、飛んでくる矢をたたき落としますが、さすがは田村麻呂の家来だけあって、どの矢もするどくうなりをあげて飛んでくるので、ついには、そのうちの何本かが鬼のからだにつきささりました。
 これには鬼どももビックリして、鉄棒をひきずりながら、逃げだそうとしました。
「それっ! 逃がすなー!」
 田村麻呂は長い刀をひきぬくと、すばやく岩の上へかけのぼり、鬼の親分の首に切りつけます。
「ギャオオオオ!」
と、いう悲鳴(ひめい)と同時に、鬼の首が空高くはねあがり、ものすごい顔で田村麻呂めがけてとびついてきました。
 ですが、田村麻呂はすばやく身をかわしたので、鬼の首は近くの木の根もとにかみつき、目を光らせたまま動かなくなりました。
 残った三匹の鬼どもも、家来たちによって切りたおされ、ついに四匹の鬼が退治されたのです。
 そのとき、ほら穴の奥から、だれかのすすり泣く声が聞こえてきました。
 家来たちがほら穴にかけこんでみますと、フジ(マメ科のつる草の総称)のつるでからだをしばられた女の子が泣いていました。
 わけを聞くと、二、三日前にここへつれてこられたというのです。
 しかし、鬼どものえじきになったのか、それより前にさらわれた子どもたちの姿は、どこにもありませんでした。
 田村麻呂の一行は、女の子を助け、村へともどってきました。
 娘の母親はわが子の無事な姿を見て、うれし涙をこぼします。
 田村麻呂のおかげで、ほら穴に鬼はいなくなり、村の人たちも安心して暮らせるようになりました。

 三春城下北西二里余りの鬼生田村があります。
大多鬼丸は、この地の俗称「地獄田」で生まれ、近くの澤に産小屋を設け、そこで産後を過ごしたと伝えられております。
 長じて武に優れ、勢力を蓄え、南奥州の覇者となりました。しかし、朝廷の命を受け奥州征伐に向かった征夷大将軍坂之上田村麻呂によって討伐をうけました。
 大多鬼丸は、大滝根の鬼穴にこもり戦いましたが、破れ、紀州の熊野に落ち延びたと伝えられております。
 鬼生田の廣度寺には、「鬼生明神」があり、中風除け、厄除け、災難免れ、招福の明神様として祀られています。



| ryuichi | 06:57 | comments (0) | trackback (x) | 平成版三春怪奇伝説 |
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