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三春物語61番 「三春猫檀家」



 むかし、江戸の終わり頃、三春のお寺で、1匹の猫を飼っておりました。


 そのころ、この地方が飢饉にみまわれ、人々の食料がとぼしくなってきていましたので、ある日、和尚さんは猫に向かって、 「人間でさえ、食べ物がなくて困っている。本当に気の毒だが、このままではみんなの手前、食べ物をやることもできなくなりそうだ。今のうちに、どこか食べ物のあるところへ行きなさい。」
 というと、和尚さんの顔をじっと見ていた猫は、うなずいて、


 「和尚さん、長い間かわいがっていただいてありがとうございました。この御恩は一生忘れません。いつか必ず恩返しをします。」


 それから何年かたったころ、名主の娘さんが亡くなり、そのお葬式をしておりましたが、その時、突然、空から黒い雲が降りてきて、あらよあれよという間に娘さんの棺をつつみこみ、また空に昇っていきました。



 すると、棺の中は不思議なことにからっぽで、娘さんは煙のように消えて無くなり、お葬式は大騒ぎになってしまいました。

 その時、どこからともなくあの猫が現れ、 「娘さんを取り戻すには、三春に御利益のある寺があります。そこの和尚さまにお願いするしか方法はありません。この和尚さまは、人並みすぐれて修行をつんだ、たいへん徳の高い情け深いお人で、お願いすれば、必ず娘さんを取り戻してくださいます。皆さん、迷っている場合ではありません。」
 と、それだけ言うと、その場から立ち去っていきました。


 名主さんたちは、和尚さんにお願いしました。

 和尚さんは無言で祭壇の前に進み、正面に着座すると静かにお経を唱えはじめました。

その声は、次第に高まってすみずみまでよく伝わり、すると不安だった人々の気持ちもだんだん安らいできました。

 どのくらい時間がたったのでしょうか。


ふたたびもとの静けさに戻るように、お経が終わりました。

すると、不思議なことに娘さんの亡骸は、もとの姿のままで安らかに棺の中に戻っていたそうです。





| ryuichi | 05:13 | comments (0) | trackback (x) | 🌸旧沢石村::実沢 |
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