2024-11-08 Fri
塵壺400号 「御北御前(おきたごぜん)三春城主田村清顕正室」 令和6年11月吉日発行
三春城主田村氏三代清顕公の正室、御北御前(於北、於喜多)は、相馬小高城(現・相馬市小高)城主相馬氏十四代当主相馬顕胤(あきたね)公の娘で、天文18年(1549)に三春城下へ輿入れしてきました。
後に米沢城主伊達氏十七代当主伊達政宗公(仙台藩初代藩主)の正室となった愛姫(陽徳院)の母です。
御北御前の婚姻に際して、花嫁於北姫の衣装やお化粧道具の費用、そして相馬家から守役として付いてくる侍女達の賄い料として、相馬領の古道村、岩井沢村、葛尾村、南津島村の4ケ村が田村領へ編入したとされ田村家と相馬家の結びつきの深さを今に伝えています。
さらに御輿入れの逸話として、後の三春城下新町末旧岩城海道庚申坂口に残る「化粧坂」の名称由来となる化粧清水には、この御北御前が城下に入る際に、この清水を使って化粧を直したことからこの名がついたとも伝わっています。
初代田村義顕公の正妻は、磐城大館城(現・いわき市内郷・好間)城主岩城氏十七代当主岩城常隆公の娘、二代隆顕公の正妻小宰相は梁川城(現・伊達市)、西山城(現・桑折町)城主伊達氏十四代当主伊達植宗(正宗の曾祖父)公の娘、そして三代清顕公の正室が相馬家から、さらにその娘愛姫が伊達政宗へと嫁ぎ、三春田村家三代当主の婚姻はそれぞれの時期の仙道(南奥州)地域の利害関係の構図が如実に表されています。
御北御前は、後の立ち振る舞いから推察するに大変に勝ち気で気丈な性格と見受けられますが、姑となる伊達家出身の小宰相とは単に嫁と姑の関係以上に、里(出身)である相馬家と伊達家の戦略的な外交関係がそのままに投影されていたようで、二人の険悪な関係が見て取れる伊達家への手紙なども残っています。
天正14年(1586年)、城主田村清顕が没すると跡目を巡るお家騒動が発生し、争いとなります。清顕公と御北御前の夫婦には一人娘の愛姫以外には子がいなかったので後継者問題があり、家中は、筆頭宿老田村宮内入道頼顕(月斎)を中心とする「月一統」が後押しする伊達派と、小野城主の田村梅雪斎顕盛を中心とする相馬派の御家騒動に発展します。
御北御前は、主君(清顕公)没後は出家したものの、混沌とする戦国期の仙道に於いて主亡き後の田村家を案じて“田村ノ後室”として実権を握って田村家中の陣頭指揮を執り、田村家宿老重臣を掌握しながら実家である相馬家と愛姫の嫁ぎ先の伊達家との均衡を保ってこの混乱を切り抜けようと苦心します。
天正16(1588)年には、田村家中の相馬派は家中掌握のため、甥の相馬家当主相馬義胤(そうまよしたね)が手勢を引き連れて強硬に三春城入場を企てますが、伊達派の田村月斎や重臣橋本刑部顕徳らの指揮する直属の宿直田村不断衆が撃退して撤退させます。
結果的には、相馬派の盟主とされる御北御前を船引舘へ更迭して、伊達政宗が三春城に入城すると、田村月斎や田村梅雪斎など田村家の重臣と協議して田村領の仕置を行い、田村清顕の弟田村氏顕の子である田村宗顕(孫七郎顕季、後に牛縊定顕)を後継と定めて田村家の当主とします。
そして、田村家中の相馬勢力の相馬派38名は小野保領小野城へと撤退させます。
御北御前が居住した船引舘(城)(現舘山公園)は、田村四十八舘の一つで、時の三春城主三春田村初代義顕公二男の田村起雲斎憲顕(のりあき)によって築かれました。
相馬義胤が三春城入城から撤退した際には、相馬勢は相馬派の田村清康(憲顕の子)が城主だった船引城に籠城しますが、伊達勢に攻められて敗走します。
その後、政宗の裁断により御北御前を船引舘へ隠居させて、清康を船引城から退去させます。
船引、片曽根山麓には「御前池伝説」の逸話が残っています。
史実から御前とは御北御前を指していると考えられます。
三春田村家の内乱により三春城から船引城へ追われたことを嘆き悲しみ、田村家の行く末を案じてこの池の身を投げたというものです。
史実では船引城に隠居後、奥羽仕置で相馬中村領の堤谷(堤谷御前の由来)に移り、さらに正宗の招きに応じて仙台城北舘(御北御前の由来)に居住。元和5(1619)年正月21日、仙台城下にて亡くなっています。
法名玉質性金大姉。亡骸は仙台城下金剛寶山輪王寺に埋葬されています。
蒼龍謹白 さすけねぇぞい三春 拝
おかげさまで 塵壺400号発行!
平成3年3月に発行して今回で400号となりました。
これもひとえにお客様からの励ましや誤記載や誤字脱字の修正及び指摘などのご指導ご鞭撻のお陰だと思っております。
衷心より御礼を申し上げます。
今回400号発行と発行者の店主が、今年還暦を迎えたことを期に製本化することにいたしました。
詳細は、後の塵壺にてお知らせいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
三春城下真照寺参道 御菓子三春昭進堂
| ryuichi | 03:37 | comments (x) | trackback (x) | 🌸「塵壺」 三春昭進堂 |
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