「便利さを、豊かさと勘違い・・・」
 

 真照寺・阿吽講主催、吟遊歌人小川ロンさんの晩秋の恒例(第14回)のライブに息子たちを連れて出かけました。
ロンさんは、京都在住のフォークシンガーです。
  1975年フォークデュオ「ジャンク」としてデビューの後ソロとなり、ギター1本を抱え30年間全国各地で演奏活動をしているかたわら、旅先ではボランティアで老人施設や養護支援学校、そして小学校などでの慰問コンサートも積極的に行っています。
以前、FM仙台のDJもされていただけあって、ライブの中はユーモアたっぷりのトークで会場をにきたお客さんを魅了しています。
  ロンさんの歌を聴いていると、詞や曲も温かくて日常の小さな幸せがとても愛おしく感じられます。そして迫力ある唄声に聴き惚れトークに笑いも人生の教訓もあって楽しいあっという間の時間でした。
  今回ライブの中で、倉本聡脚本の終戦の日特別番組「歸國(きこく)」(今年8月14日TBSで放映)の話になり、作中にあった「豊かさと便利さを勘違いしている」というセリフの話をされていました。
人と人のふれあいを何よりも大切にしているロンさんらしい話だと聞いていました。
「歸國」の内容は、8月15日、終戦記念日の深夜。静まり返った東京駅のホームに、ダイヤには記されていない1両の軍用列車が到着します。
そこに乗っていたのは、太平洋戦争中に南の海で玉砕し、そのまま海に沈んだ英霊たちでした。彼らの目的は、平和になった故郷を確認すること。そして、かの海にまだ漂う数多の魂に、その現状を伝えること。
  長渕剛が演じる秋吉部隊長の「わずかな時間で気の毒ではあるが、もっとも夢描いてきた大切な場所を訪れてきてほしい」という訓示ののちに、英霊たちは限られた時間内に、それぞれの愛する者を訪ね、戦後65年経った日本の現状を見るという物語です。
配役に、ビートたけし、長淵剛、小栗旬などが出演して話題となりました。
戦後の日本は本当に豊かか、幸せとは何かと疑問を投げかけています。 
あの世へ帰る間際の 「こんな日本にするために戦死したんじゃない・・・・」という部隊長のセリフが胸をえぐります。
 確かに、今の日本は生活の便利さと引き換えに多くのものを失ったと感じることが多々あるのではないでしょうか。そして、それらは果たして失ってもよいものだったのか、それを失ってまで、今の日本の姿は必要なものだったのでしょうか?
 部隊長のセリフにあった「貧幸」という倉本流の造語。奥深く考えさせられる言葉です。
当然「貧困」は誰しもがいやでしょうが、貧しさの中にもあるささやかな幸せ、それを感じられることが人間にとって本当に大事なことなのかもしれません。
今の日本に足りないものは、「昔の日本人にあった心の豊かさ」なのだと思います。
そして、私たちは、便利さと豊かさをどこで掛け違えてしまったのでしょうか。
「日本は、これだけ豊かでもまだ不満なのか」
「日本は豊かになったが、心は豊かになっていない」という戦争で死んでいった英霊たちの叫び・・・
「豊か」というのは、あくまでも精神的な意味で、物質的な豊かさだけではないんだと、この国を憂いた名も無き英霊たちの無言のメッセージを伝えています。

蒼龍謹白   合掌