2022-01-09 Sun
青石稲荷神社大字青石は藩政時代青石村となって、三春藩では一番小さな村でした。
稲荷神社の祭神は『宇迦魂之命』 古刺伝説によれば『大正年間京都伏見稲荷大明神ノ分霊を奉り、明治維新の際 村社二列せらる』と伝へラレルと言い伝えられています.
又社殿には実沢の彫刻師佐々木幸七が彫った、中国の古事をモチーフにした見事な彫り物が余すところ無く展開されています。
その彫刻は瓶に転落した子供の命を助けるために大切な瓶を壊し命を救ったと言うもの、又年老いて体の弱った母のために自分の母乳を飲ませたと言うものなど。
三春城下真照寺参道 御菓子三春昭進堂 菓匠蒼龍
2009-07-06 Mon
三春城下最北部の青石という村に伝わる昔話です。
ある年の冬のこと。
一人のマタギが、隣国の岩代で雪山のなかで獲物をおっかけているうちに、すっかり日が暮れてしまいました。
さてどうしたもんだろうと、辺りをみまわすと、それほど遠くないところに、ポツンと一つ明かりがみえました。
「これは、天の助けだ」
マタギは、明かりのほうへと歩きだしました。
雪の中をころがったり、尻餅をついたりして、やっと辿り着いてみますと、それは炭焼き小屋でした。
ドンドンドン
マタギが小屋の戸をたたくと、百姓が顔をだしてきました。
「おら、青石からこの山さきた、マタギだども、山ん中でこの大雪だ、家さ、帰ろうにもかえられねえ。なんとか一晩、どこぞの片隅でええから、泊まらしてくれねえべか」
マタギが、すがるようにして頼むと。
「ああ、ええとも、ええとも。まんずこんなあばら家だが、入ってけれ」
百姓はこころよく、マタギをむかえ入れて、炉端へすわらせました。
マタギがホッとしていると、百姓がこんなことをいいだします。
「実は、一つ頼みてえことがあるだ。こんな大雪だども、おら、なんとしても下の村さおりていかねばなんねえ用事があってな。ちょうどいいぐあいに、おめえさまがきてくれた。なんともすまんだども、じきにかえってくっから、ちょっとのあいだ留守をたのまれてけれ」
マタギは、小屋に入れてもらったお礼にと、
「ああ、ええとも、ええとも。おやすいご用だ。安心していってけれや」
と、留守をひきうけました。
「それをきいて大だすかりした。ただ、火をもやすことだけは、忘れねえようにしてけれや。そこのすみっこにたきぎがなんぼでもあるから、どんどん燃やしててけれ」
と、いいのこして、百姓は大雪のなかをいそぎ足ででていきました。
マタギは炉端にポツンと独りすわって、たきぎをくべているうちに、体も暖まってきたし、疲れもでてきたので、いつのまにかウトウトと、眠ってしまいました。
ハッと気がつくと、火が下火になっています。
小屋の隅のほうからたきぎをもってきて、くべながら、
「それにしてもお百姓の帰りは遅えなあ。もっとも、この大雪でこの暗さじゃあ、きっと難儀しているんだべ」
などとかんがえながら、またウトウトと、眠ってしまいました。
どのくらいたったのか、ゾクゾクと寒さをおぼえて目をさましてみると、もうすっかり火が消えてしまっています。
「こらいかん、火がきえたら、オオカミのやつがやってくるぞ」
と、たちあがって、たきぎをとりにいこうとすると、小屋の片隅にたてかけてある屏風の陰で、なにやらものの動くけはいがしました。
「はて、この小屋には、今夜はおらのほかには、だれもおらんはずじゃが」
するとこんどは、ズリッズリッと音がしました。
またぎがこわごわそっちのほうをみてみると、屏風のむこうに、女の人の首がみえます。
「わあっ、ばけもんだ。た、た、たっ、助けてくれ!」
思わず叫ぶと、そこらにあった杉の葉やたきぎやらを、かまわずなげこんで、大いそぎで火をつけました。
火がパッと、あかるくもえあがります。
すると、なにやらバタバタとにげていくような音がして、やがて静かになりましたが、またぎはもう、生きたここちがしません。
ガタガタとふるえながら、
「はやく夜が明けてけれ、はやくお百姓帰ってきてくれ」
と、同じことを唱えるばかりです。
ようやく夜が明けてきました。
またぎがホッとしたところへ、百姓が村人を四人ばかりつれてかえってきました。
「ああ、すまねがった。とうとう夜が明けちまったが、夕んべはよく眠れたべか」
「いんや、夕んべは、えらいおっかねえめにあった。とても眠れるどこのさわぎじゃねえ」
と、昨夜おこったことを、すっかり百姓に話して聞かせたのです。
すると百姓は、あらたまった顔になって、
「なんともすまねがった。じつは女房が、急に体のあんべえ悪くなってな、死んでしまったんだ。おめえさまのくる少し前のこんだった。それで、村さ下りて人をよばってこようとおもったども、留守のあいだに火がきえてしまえば、オオカミがやってきて、女房を食ってしまう。はて、どうしたもんだろうと思案しておったところへ、おめえさまがやってきてくれた。それで、おめえさまには悪いとおもったども、黙って留守番を頼んで、でていったっちゅうわけだ。夜中に火がきえたとき、オオカミのやつが、女房ばつかまえてでていこうとしたのだべえ。おめえさまが火をもしてくれたおかげで、助かっただ。怖いめばあわして、面目次第もねえ。これこのとおり謝るで」
と、またぎに頭をさげて謝りました。
昨夜は、化け物のほうにすっかり肝をつぶしてしまって、オオカミには気がつきませんでしたが、そういわれてあたりをみまわすと、たしかに小屋のゆかに、けものの足あとがいくつかついています。
マタギは山のなかでなん十年とくらしてきましたが、こんな恐ろしいめにあったのは、あとにもさきにも、これがはじめてだったということです。
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